Vol.215 2026年8月号
TOPICS
人類の行く末を思う炎天下
「当クリニックはエアコンを廃止しました」 SNSで見かけた投稿です。曰く、「人間に備わった調整機能を利用しながら暑さに慣れていき、扇風機を使って汗を乾かすのが最善である」。(その他いろいろ説明が加えられたものでしたが、ここでは割愛します。)
わたしは子供のころ家に一台もエアコンがなく(名古屋市内/友達の家にはあり、わが家が珍しい時代)、夏は扇風機と団扇で過ごしていました。暑くて寝れずたびたび台所に氷を食べに行く。おやつにはトマトや塩を付けた胡瓜。学校も扇風機しかなく、生活の中で冷房を体感するのは買い物の短い時間だけ。
そういう生活環境では、スーパーの冷房は最初こそ涼しいけれど帰るころには冷えすぎているという具合で、夏は暑いけどそういうもの、という感覚でした。 あれが「暑さに慣れる」ということだったのかなと。
今でも冷房は苦手で、冷えすぎてしまうことも。でも、いまさら氷を食べる冷房無しの生活はしんどいなと……。幼児もいますし、自分に子供のころの元気さはもうありません。暑さを我慢してぐったりするよりは、冷房+衣服で調節するほうが現実的かなと思っています。
ここでふと思うことは、暑さに慣れる、ということが、現代では案外難しいのでは、ということです。
職場、学校、交通機関、お店……これらの場所では個人の都合で設定を変えることは難しい。家は高気密に設計されていて、冷暖房使用を前提としています。テレビをはじめ方々で「夜間も冷房は消さないで」という運用方針が推奨されています。
加えて、昔とは平均気温や日差しの質、気温の乱高下の仕方も違うらしい、という点も関係あるでしょう。
でも社会全体が、技術で暑さをしのぐという方針で進んできたために、人体そのものの暑さ順応をおろそかにし適応力を下げてしまったという面は、確かにあるのではないか、と思います。
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ところで、冷房を使って暑さをしのぐことはそんなに悪いことでしょうか?
高齢になると体温調節や認識の精度が落ちて、極端な例ですが「暑いことに気づかず、いつも通り掛布団をかけて寝たら熱中症で亡くなった」ということもあると聞きます。
職場も学校も、汗だくになるよりは冷房管理されていたほうが活動の効率は上がるでしょう。今の社会には欠かせないコンピューター類も熱を持つし放出するので、この点でも部屋を冷やす必要性があります。
冷房使用によって昔よりも環境が改善した例はたくさんありそうです。
人間は知恵と技術革新によって繁栄してきて、そうして生み出された技術も含めて人間の生態といえるのではないか。だとしたら、人体を強くするのではなく技術で補うという選択も、生物の進化・変化からそんなに外れたことではないのでは……?その過程で今ちょっと人体が弱くなってるけど、そのうちもっと技術で完璧にカバーできるようになるのかも。
この方針で良かったのかは、ずっと先の世代にならないと判断できないことでしょうから、今は各自が考える最善な選択肢をとって、多様性をもっておくことが人類が生き残っていくためのカギなのかな……、などと急に遠い未来に思いをはせたてみたりしています。今日も暑いなあ。。。
(T1)
ヘタ字のコラム
Shall We お稽古? の巻
人はよく「○○になったら」と口にします。「仕事がひと段落したら」「子どもが独立したら」「定年になったら」などなど。そうなったら──環境が整うので──「××に挑戦しよう」と続くわけです。
でも実際に定年になったら「う~ん、もう少し状況を見てから」。これでは××に挑戦する前に死んでしまいます。 何事においても、環境が整った完全な状態など望めません。そんな“いつか” は永遠に来ないのです。
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心理学に「Being」(ビーイング)と「Doing」(ドゥーイング)という概念が あります。
Beingは「存在そのもの」に価値を見出す考えです。人は居るだけ(存在するだけ)で価値があるとします。一方、Doingで価値があるのは「成し遂げた事柄」です。仕事の成果はその代表格でしょう。今の世の中は成し遂げた人がもてはやされます。つまりDoingの価値観が優位。ただそんな価値観のもとでは、進行形では何も成し遂げていない乳幼児や、病気や年齢のため介護される身の人は、置き去りにされかねません。
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では、Beingの価値観で生きればどうでしょうか。何かを成し遂げていないとしても、僕は私は、存在するだけで価値がある。こういう感覚が心にあれば、自己肯定感が満たされ、幸せな人生を過ごせるような気がします。
Beingの価値観(感覚)を育てるには、困難に挑戦することが有効だといいます。困難といっても極端なことではなく、新たなことにチャレンジするということでかまいません。たとえば、ダンス、ピアノ、英会話など習い事にチャレンジするといったようなことです。
初めてなので、うまくいきません。できなくて、ダメで、どうしようもない。 Doingの価値観では落第です。でもあるとき、うまくいかないことが自分の存在価値を下げることにはならない。こう気づく中で、Being感覚が育っていく のだとか。
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映画『Shall We ダンス?』をご覧になったことがありますか。主人公のサラリーマン(演:役所広司)は、通勤電車の中から見えるダンス教室に興味を覚え、そのドアをたたきました。彼は「定年になったら」とは考えなかったんですね。
それではさっそく(「週末になったら」なんて言ってはダメですよ)、気になる習い事を検索しましょうか。いや『Shall We ダンス?』を観ることが先かな。
(駿馬)
今月のことば
ダンスにヘタもうまいもないんですよ
楽しく踊れれば、それが一番なんです
── ─映画『Shall We ダンス?』より、ダンス教室の田村たま子先生のことば
今月のすうじ
28度以下
事業者は、空気調和設備を設けている場合は、室の気温が十八度以上二十八度以下に(中略)なるように努めなければならない。(労働安全衛生法に基づく事務所衛生基準規則第5条第3項)
編集後記
毎日暑いですが、快適に寝られるエアコンの設定方法がいまだにわかりません。我が家は、朝までつけっぱなしにしているのですが、冷房にすると、明け方湿度があがって、なんか不快。ドライにすると、ちょっと暑いし、なんかゴーという音が気になる。SNSなどをみてみると、冷房28℃にして除湿器をつけると良いという声も。でも、うちの除湿器は音がうるさいので、とても付けられない。テレビでは、冷房の設定温度を24度にして、布団をしっかりかけて、頭を冷やすのが一番快適に寝られ る方法だとも。いろいろ試してみてはやく朝まで一度も起きずにぐっすりと寝たいものです。
(T2)
* 掲載されている情報や制度は、各号の発行当時のものです*


