Vol.193 2024年10月号
TOPICS
eスポーツはスポーツか?と聞かれた話
母とニュースを見ていたら、スポーツ結果のくだりで「「eスポーツ」なるものがどうして(従来の「スポーツ」と同様に)競技として認められるのかわからない」ということが話題になりました。否定というよりは困惑のニュアンスです。
母の中では、「eスポーツ」=ゲーム=遊び という認識が強く、「スポーツ」と呼ぶことに違和感を覚えるようです(加えて「ゲームばかりしているとバカになる」という考えがそれを強化しています)。わたし自身にも「ゲーム=遊び」という感覚はあり、この問いにはっきり答えるのは難しいなと感じました。
しかし自分も趣味としているゲームに対して、たいしたことないものであると言われるのもどこか心外、説明を試みました。
「ゲームというのは、一定の制約(ルール)の中で勝利条件を目指して競い合うもの、とすれば、違いはないのでは?」
コートの端に置かれた白い枠に足のみ使ってたくさんボールを入れた方が勝ち、特定のゲーム機を使用して同じ色の物体をつなげ高得点を目指す……道具や勝利条件が違うだけでは?と。
子育てをこなしてきた母親視点で考えてみると、外で身体を動かして行う「スポーツ」は、室内でテレビやパソコンに向かって画面を見続けるだけのゲームと違って健康的で良い、というのもありそうです。ただ、勉強時間確保の妨げと言いたいのであれば、それは外で走り回ってばかりでも同じこと。あるいは、コーチの指示に盲目的に従って行う身体活動と、自分で作戦を練って取り組むPCゲームと、どちらが有益でしょうか?
一般社団法人日本eスポーツ連盟のサイトによると「「eスポーツ(esports)」とは、「エレクトロニック・スポーツ」の略で、広義には、電子機器を用いて行う娯楽、競技、スポーツ全般を指す言葉であり、コンピューターゲーム、ビデオゲームを使った対戦をスポーツ競技として捉える際の名称。」とのこと。
スポーツ庁の広報サイトには「スポーツ庁が定める「第二期スポーツ基本計画」では、スポーツとは「身体を動かすという人間の本源的な欲求に応え、精神的充足をもたらすもの」と定義されています。」とありました。身体運動が要件の一つとなれば、「eスポーツ」は「スポーツ」と言えないかも……。
「eスポーツ」は、指先の細やかな制御や反射神経、集中力といったものをより要求しているように思います。身体能力の要求があまり無いように感じますが、最後は気力体力筋力が重要なのではと思いますし、他にも、例えば戦略的な思考やチームワークは、共通して重要ではないでしょうか。
eスポーツ否定派に対して忘れがちでは?と思うのは、「eスポーツ」にも鍛錬(とセンス)が必要という点です。「スポーツ」と同様に、選手は練習を重ね、試合に臨んでいます。遊びだからどうのこうの、ではなく、懸命に鍛錬しているのは同じです。
遊びという点では、そもそも「スポーツ」もプレイヤーとしての入りはほとんどの場合が子供時代の遊びや習い事でしょう。野球やサッカーの興行もオリンピックも、観客にとっては娯楽であって、生命維持に必須ではありません。近年では「eスポーツ」にもプロ選手がおり、ゴルフ等のように高額な賞金総額の大会もあります。どちらにも遊びのシーンと競技のシーンがあるわけです。
人間の能力や技術を高めて競い合うこと、その中で自己を高めていくこと、勝利の喜びを得ること。見る側においても、一生懸命に挑む姿や、鍛えられた素晴らしい技術から、楽しさや感動といったものをもらうこと。取り組み方や人・社会とのかかわり方を見るに、「eスポーツ=スポーツ」とはいえなくとも、単に否定はしないで、少しタイプの違う似たようなものとして捉えていくことがいいのではないかと思います。
(T1)
ヘタ字のコラム
特殊詐欺にだまされないために の巻
■■■「警視庁捜査2課です」
知り合いの友人がSNSに投稿していた話です。
携帯電話に「警視庁捜査2課」を名乗る男から、電話がかかってきたそうです。電話の主は「あなたは○○市○○町1-1-1にお住いの○×△□さんで間違いないですね」と正確な住所氏名を告げ(本人はこの段階でかなり動揺したそう)、続けて曰く。容疑者の自宅を捜索したら、あなたのキャッシュカードが出てきた。事件名と事件番号は、これこれしかじかだ。あなたには資金洗浄に関わった疑いがある。免許証持参で○○県警に出頭してもらう。勾留(こうりゅう)することになるが、日程は大丈夫か。
事件名と事件番号は復唱させられたそうで、高圧的だったという物言いも相まって、電話は終始相手方のペース。知り合いの友人も、指示に従わざるを得ないような気になったそうです。でも、途中で電話が切れたので冷静になれた。そこで、○○県警に電話したところ特殊詐欺(電話を使い、ウソのやりとりでお金をだましとる詐欺)だと判明し、事なきを得たといいます。
本来の(?)流れは、キャッシュカードの口座を警察の口座に移すので、口座番号その他情報を教えろというもの。それでお金をだまし取ろうというわけです。
よく考えてみれば、勾留するのに「日程は大丈夫か」と聞いてくるのはおかしいような気がします。でも、それは冷静な状況で考えられることで、動揺している電話の最中に、それを指摘するのはむずかしい。
■■■自分は大丈夫、は禁物
特殊詐欺と聞くと、自分はだまされるはずないと思います。そんな間抜けじゃない。自分ならそんな電話なんてすぐ詐欺だと見破るさ。でも、判断力が十分で、常識ある社会人でさえ動揺し、言うことを聞きそうになってしまった。自分は大丈夫だという過信は禁物です。
■■■いったん電話を切るのが肝要
特殊詐欺にだまされないためには──まず、知らない番号からの電話には出ない。出てしまって、もし一瞬でも怪しいと思ったら、その直感を信じよう。おそらくそれは正しい。それを信じて電話を切る。冷静になるためです。詐欺グループは私たちに判断をする間を与えたくありません。一気呵成に事を運びたいので、いろいろ言ってきます。「守秘義務があるので、だれかに相談などしたらあなたの立場も危うくなる」←こんなのはもちろんウソもウソ、大ウソです。
電話を切って、一呼吸おいて冷静に。そして、信頼できる知り合いに相談しよう。
(駿馬)
今月のことば
だまされる人よりも、だます人のほうが、
数十倍くるしいさ。地獄に落ちるのだからね。
── 太宰治「かすかな声」より)
今月のすうじ
447億円
2023年1月から12月の特殊詐欺の被害総額。件数はおよそ19,000件。対策は、怪しい電話はとにかく切ること。一呼吸置くために。一方的に切ったら相手にわるいなんて気遣いはもちろん無用。おかしいなと思ったらブチッと切るに限る。
編集後記
先日、10年ぶりに渋谷に遊びに行きました。学生の頃に渋谷でアルバイトをしていたこともあるので、割と渋谷は詳しい方だと思っていたのですが、京王井の頭線の改札を出ると、自分が思っていた通路がなくなっており、どこに向かって歩けばいいのかわからなくなりました。駅周辺には新しいビルもたくさんできており、なんだか渋谷のイメージが変わりました。昔はギャルが多く、10代の若者の街というイメージでしたが、今では駅周辺にはビジネスマンも多く、少し洗練された綺麗な街になっていて、とてもびっくりしました。まだ工事もあちこちでしていたので、今後またどう変わっていくのか楽しみです。
(T2)
* 掲載されている情報や制度は、各号の発行当時のものです*